中心なか)” の例文
お江戸京橋は亀島町を中心なかにして、狂女のお艶が姿を現わしたのはこの年も春の初め、まだ門松が取れたか取れないころだった。
闇太郎と菊之丞——名乗り合ったことはないが、以心伝心、雪之丞を中心なかにしてもうとうに、其の底まで読み合っている。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
そのハンカチの棒のように絞り固めた中心なかの方はまだ薄じめりしているらしく、外側のじれたしわの上には、今まで入っていたポケットの内側の染料が赤く波形に染み付いていた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)