不可思議ふかしぎ)” の例文
みせさきが、ふたたびしずかになったとき、みんなはかお見合みあわせて、いまさら運命うんめいというものの不可思議ふかしぎかんがえさせられたのであります。
春さきの古物店 (新字新仮名) / 小川未明(著)
艦長松島海軍大佐かんちやうまつしまかいぐんたいさ號令がうれいはいよ/\澄渡すみわたつて司令塔しれいたふたかく、舵樓だらうには神變しんぺん不可思議ふかしぎ手腕しゆわんあり。二千八百とん巡洋艦じゆんやうかん操縱さうじゆう自在じざい
で——まッ逆光線ぎゃっこうせんの夕やけにらされている小太郎山こたろうざんの上、陣馬じんばはらいちめんは、不可思議ふかしぎ自然美しぜんびにもえあがっていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
印度洋のかの不可思議ふかしぎな色をして千劫せんごう万劫まんごうむ時もなくゆらめくなぞの様な水面すいめん熟々つくづくと見て居れば、引き入れられる様で、吾れ知らず飛び込みたくなる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
いづれか此両策の一をりしなるべし、而るに後に聞く処にれば、沼田近傍はあめつねおうかりしに、利根山中日々晴朗せいろうの天気なりしは不可思議ふかしぎと云ふの外なし
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
彼等かれら彼等かれらに、不徳義ふとくぎ男女なんによとしてづべくうつまへに、すで不合理ふがふり男女なんによとして、不可思議ふかしぎうつつたのである。其所そこ言譯いひわけらしい言譯いひわけなんにもなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
屋根板やねいたにほひぷんとする、いぢかりまたの、腕脛うですねふしくれつた木像女もくざうをんななにる! ……わるこぶしさいたせて、不可思議ふかしぎめいた、神通じんつうめいた、なにとなく天地あめつち
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのさま人ありて行儀ぎやうぎよくつみあげたるごとく寸分のゆがみなし、天然てんねん奇工きこう奇々妙々不可思議ふかしぎなり。
風にあおられた海のごとく、あるいはまたまさに走らんとする乗合自動車のモオタアのごとく、轟く胸の中に描いているのは、実にこの来るべき不可思議ふかしぎの世界の幻であった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これ權化ごんげして千しゆ萬樣ばんやう變化へんくわこゝろみる。ガネーシヤすなは聖天樣せうてんさま人身じんしん象頭ざうづで、惡神あくしん魔羅まら隨分ずゐぶんおもつた不可思議ふかしぎ相貌さうぼうものばかりである。埃及えじぷとのスフインクスは獅身ししん人頭じんとうである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
この、金魚の死んだ不可思議ふかしぎな現象こそは、東照宮さまの御神託で、その者に修営なおしてもらいたい……という日光様のお望みなんだそうだが、インチキに使われる金魚こそ、いい災難。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ぼく諸君しよくんこの不可思議ふかしぎなる大宇宙だいうちうをも統御とうぎよしてるやうな顏構かほつきをしてるのをると冷笑れいせうしたくなるぼく諸君しよくんいますこしく眞面目まじめに、謙遜けんそんに、嚴肅げんしゆくに、この人生じんせいこの天地てんち問題もんだいもらひたいのである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
少年せうねん不可思議ふかしぎゆめは、しろみちをはてしもなく辿たどつた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
ほかにあのパイれるといふ不可思議ふかしぎ魅力みりよくがある。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
最初先生の不可思議ふかしぎにわかの家出を聞いた時、私は直ぐ先生の終が差迫さしせまって来た事を知りました。それで先生のに接した時も、少しも驚きませんでした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そのさま人ありて行儀ぎやうぎよくつみあげたるごとく寸分のゆがみなし、天然てんねん奇工きこう奇々妙々不可思議ふかしぎなり。
あとで、近所きんじよでも、たれ一人ひとりばらしいむれ風説うはさをするもののなかつたのをおもふと、渠等かれらは、あらゆるひとから、不可思議ふかしぎ角度かくどれて、たくみいつつたのであらうもれぬ。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
このすなたゞ細微さいびなるばかりではなく、一種いつしゆ不可思議ふかしぎ粘着力ねんちやくりよくいうしてるので、此處こゝ陷落かんらくしたものあがらうとしてはすべち、すべちてはすなまとはれ、其内そのうち手足てあし自由じゆううしなつて
ずいぶん諸国の花明柳暗かめいりゅうあんの里を見て来ているが、およそこの深川ほど、意気だとか、きゃんだとか、不可思議ふかしぎな女だましいと、あそびの世界の燈火ともしびとを、まるで名匠の芸術的事業でもあるように
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
尼提は糞器の重いのをいとわず、もう一度他の路へ曲って行った。如来が彼の面前へ姿を現したのは不可思議ふかしぎである。が、あるいは一刻も早く祇園精舎ぎおんしょうじゃへ帰るためにぬけ道か何かしたのかも知れない。
尼提 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
... 浄衣じやうえその外智月と(百樹云、大津の米屋の母、翁の門人)乙州が妻ぬひたてゝ着せまゐらす』又曰『二千人の門葉辺遠もんえふへんゑんひとつに合信かつしんするちなみえんとの不可思議ふかしぎいかにとも勘破かんはしがたし』
しかこの三尖衝角さんせんしやうかくは、この海底戰鬪艇かいていせんとうてい左程さほどいちじるしい武器ぶきではない、さらおどろきは、てい兩舷りようげん裝置さうちされたる「新式併列旋廻水雷發射機しんしきへいれつせんくわいすいらいはつしやき」で、この水雷發射機すいらいはつしやき構造かうざうの、如何いか巧妙こうめう不可思議ふかしぎなるやは
... 浄衣じやうえその外智月と(百樹云、大津の米屋の母、翁の門人)乙州が妻ぬひたてゝ着せまゐらす』又曰『二千人の門葉辺遠もんえふへんゑんひとつに合信かつしんするちなみえんとの不可思議ふかしぎいかにとも勘破かんはしがたし』
けだし芭蕉の盆石ぼんせきが孔夫子の泰山たいさんに似たるをいふなり。芭蕉かつて駔儈そくわいふう軽薄けいはくしふ少しもなかりしは吟咏ぎんえい文章ぶんしやうにてもしらる。此翁は其角がいひしごとく人の推慕すゐぼする事今に於も不可思議ふかしぎ奇人きじんなり。
けだし芭蕉の盆石ぼんせきが孔夫子の泰山たいさんに似たるをいふなり。芭蕉かつて駔儈そくわいふう軽薄けいはくしふ少しもなかりしは吟咏ぎんえい文章ぶんしやうにてもしらる。此翁は其角がいひしごとく人の推慕すゐぼする事今に於も不可思議ふかしぎ奇人きじんなり。