『や。ちょうどよいおりに戻った。平太、見知っておいてくれい。家内かないだ。——去年まで、上西門院じょうせいもんいん雑仕ぞうしに召されていた袈裟けさまえと申すもの』
この文覚上人というのは、渡辺の遠藤左近将監茂遠えんどうさこんのしょうげんもちとおの子で、もとは遠藤武者盛遠えんどうむしゃもりとおといって上西門院じょうせいもんいんの家臣であった。