一攫いっかく)” の例文
他の一部は一攫いっかく万金を夢みて、熱病患者の如く狂いまわって居る。他の一部は一切の資産を失って、絶望のドン底に呻いている。
一攫いっかく千金、相場よりほかに道はあるまいと、五十両張り、百両張り、二百両、三百両と主人に隠れて張ったのが張る一方からおもわく違いで
またその次の細君の時代は、羽左衛門の一生に、一番のばしかけた上り口からで、好運な彼女は、前の人たちの苦心の結果を一攫いっかくしてしまったのであった。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
これでけちがついたとみえてあとの三回も負けつづけ、ひと頃は一攫いっかく七十金も領していたのが、あとでしらべてみると、とどのつまり三シリンばかりの損だった。
そしてこれからまだ千円ほどある金を資本として、根岸の競馬場の一等観覧席を占めて、馬券のガラ買合資会社コンパニーをやって一攫いっかく巨万の夢をみている彼等なのである。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこにも一攫いっかく千金を夢見る人々が渦を巻いて喧騒し、その人波を掻き分けて、眼の色変えた仲買店の小僧や番頭たちが声をらして駈けずり廻っていたが、その雑踏の間を縫って疾走する車の中で
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)