“くちもと”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
口許60.6%
口元17.5%
唇元11.7%
唇許3.6%
唇辺2.2%
口角1.5%
口辺1.5%
口頭0.7%
唇頭0.7%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
まずこの辺までは芥川さんに話しても、白い頬を窪まし、口許くちもとに手を当ててうなずいていましょうがね、……あとが少しむずかしい。——
半島一奇抄 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ニヤ/\とりやうほゝくらくして、あの三日月形みかづきなり大口おほぐちを、食反くひそらしてむすんだまゝ、口元くちもとをひく/\としたあかかへるまで、うごめかせたわらかた
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分の膝に、姫の顔をのせて、琅玕ろうかんのようにきとおっているそのおもてと、呼吸をしていない紅梅のような唇元くちもとを見て、四郎はいった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
官兵衛はその生命がけな気持を、ひとみにもこめて、秀吉の唇許くちもとを見つめた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ちよつと」と戸口より半身を示して、黄金きんの腕環の気爽けざやか耀かがやける手なる絹ハンカチイフに唇辺くちもとおほいて束髪の婦人の小腰をかがむるに会へり。えんなるおもてに得もはれず愛らしきゑみをさへ浮べたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
暫らく立在たたずんでの談話はなしあわい隔離かけはなれているに四辺あたりが騒がしいのでその言事はく解らないが、なにしても昇は絶えず口角くちもとに微笑を含んで、折節に手真似をしながら何事をか喋々ちょうちょうと饒舌り立てていた。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
少女の口辺くちもとには微笑が浮んでいた。西応房の猟師は猟銃を控えた。
女仙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
忽然こつぜんとして眼が嬉しそうに光り出すかと思う間に、見る見るこらえようにも耐え切れなさそうな微笑が口頭くちもとに浮び出て、ほおさえいつしかべにす。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
紳士は俄然がぜん大口をいて肩を揺ッてハッハッと笑い出し、丸髷の夫人も口頭くちもとしわを寄せて笑い出し、束髪の令嬢もまた莞爾にっこり笑いかけて、急に袖で口をおおい、額越ひたえごしに昇の貌を眺めて眼元で笑った。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
宮はあやぶみつつ彼の顔色をうかがひぬ。常の如く戯るるなるべし。そのおもてやはらぎて一点の怒気だにあらず、むし唇頭くちもとには笑を包めるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)